将来の夢

 将来の夢が、「米国大統領の影武者」だった時期があった。

 理由こそ覚えてないけど、残念ながらこれは否定の仕様もない事実っていう。自分に政治能力がないと自覚していたのか、それともちょっと遠慮してみたのか、はたまた影武者に憧れを抱くお年頃だったのか。どの理由にしても、なかなかハイレベルな夢を抱いてしまったような。

 そもそも影武者っていうのは、本来自分からなるものじゃない。命を狙われる可能性のある時の権力者が、国民の中から自分にそっくりな人間を見つけて影武者に仕立て上げるのが普通。

 だから自分から影武者になるためには、最低以下のプロセスを踏む必要がある。

1. 自分のそっくりさんを見つける。
2. そっくりさんを説得する。
3. そっくりさんを教育する。
4. そっくりさんに大統領になるための法的条件をクリアさせる。
5. そっくりさんを自分の政治手腕で大統領まで押し上げる。
6. そっくりさんの影武者になる。

 3、6はまあ当然として、1、2、4、5、がものすごく難しいよね。まず自分のそっくりさんを見つけ出す作業。存在するかどうかも分からないのそっくりさんを発見するために、日本中を駆け回らなきゃいけない。

 それをクリアできたとしても、次は説得。多分その人は普通の職についてるんだろうけど、それを辞めさせて、米国大統領を目指してもらうよう説得しなきゃいけない。相当金を積まなきゃ駄目だよ。

 で、次は3を飛ばして4の法的条件。国籍取らなきゃいけないのは当然のことだけど、あと他にも外国人には結構な障害があった気がする。いざとなったら法律を改正しなきゃいけない。これもものすごい面倒。

 そして5ですよ。「そっくりさんを自分の政治手腕で大統領まで押し上げる」。もうそろそろ心が折れる。一般人を大統領にするのってどれほどの労力いるの。たとえどんなに教育を叩き込んだとしても、アメリカ人からすれば、ぽっと出のアジア人。一体誰が投票してくれるんだろう。ものすごい選挙活動が必要だよね。多分この辺がクリアできないと思う。あ、ちなみにここまでで自分の姿は公に出せないからね。影武者にならなきゃいけないから。

 いやー、うん。何で昔の自分はこんな所業が可能だと思ってたんだろう。馬鹿だったのかな。馬鹿だったんだね。

 あ、そうそう。余談ではありますが、今の夢は世界制服です。