蒲団を吹っ飛ばせ。

 「蒲団が吹っ飛んだ」は、実は高度なギャグなんじゃないかな、と私は考える。少なくともこのギャグは、「蒲団」と、「吹っ飛ん(だ)」の部分をかけただけの、単純な駄洒落じゃない。

 では、まず手始めに、「蒲団が吹っ飛んだ」という場面を想像してみよう。さあ、頭の中で蒲団を吹っ飛ばすんだ。

 想像しにくい、という方のために、こちらで適当に状況を作ってみる。

 和室に蒲団がひとつ敷いてある。辺りには誰もいない。蒲団の中には……まあ、いてもいなくてもいいと思う。その状況下において、突然蒲団が吹っ飛ぶ。吹っ飛ぶ、というからには、それなりの速度で数十メートルは移動してもらわないと困る。窓を突き破り、それでもなおその勢いは止まず、外へと飛び出す蒲団。その速度は優に音速を超え、衝撃波を撒き散らしながら、遥か彼方へと飛び去っていく。――それは、自由を求めての飛翔。虐げられるだけの人生(蒲団生?)を厭い、自らの力で未来を切り開かんと、遠くへ、もっと遠くへと、ただひたすらに飛び続ける。まるで、鳥籠という束縛から逃れ、自由を手にしたカナリアのよう。二重の意味で*1


 ……まとめると、誰も居ない部屋で、突然蒲団が超音速で吹き飛び、窓を突き破って外に出る。どんな超常現象だよ、と突っ込みたくなる光景だ。

 そういえば、妖怪の中には「枕返し」、という寝ている人の枕をひっくり返すだけの地味な妖怪もいるが、そいつに倣うなら、この現象は妖怪「蒲団吹っ飛ばし」の仕業、ということになるのだろうか。夜な夜な超音速で蒲団を投げる妖怪。こいつは危険だ。蒲団は軽く、表面積も大きい。つまり、空気抵抗を受けやすい、ということだ。試してみれば分かると思うが、蒲団というものは、投げたところでそう遠くへは飛ばない。そんなものを、音速で吹っ飛ばす。信じられない腕力だ。多分日本三大妖怪の酒天童子もこいつには及ばない。退治とか絶対出来ないわ。安部清明の末裔に頼んでも「いや、ちょっと無理っす」って断られるレベル。それでも強いて退治しようとするなら、戦車がいる気がする。妖怪退治に戦車。新しいね。

 失礼、話が逸れた。まあ、妖怪はさておき、この光景、想像してみるとなかなかシュールで面白いんじゃないか、と思う。制作者は、絶対こういう意図でこのギャグを作ったんだと主張させてもらう。残念ながら誰に話しても賛同を得られないんだけど、誰か、気の合う方は居ないだろうか。

 あと非常にどうでもいいんだけど、「布団」って当て字らしいね。

*1:カナリアは、愛玩用の動物として飼養されているため、自然界で生きていくのは難しいとされる。同様に、蒲団は睡眠用の道具として製作されているため、自然界で生きていくのは難しい、と考えられる。考えられるってかまず無理。